スタートアップは、一人で創業する場合もありますが、複数人で創業する場合も多いかと思います。仲間と会社を立ち上げるときは、十分な信頼関係があり、ずっと一緒にやっていけると思われるかもしれません。しかし、会社運営を続けていく中で、最初のモチベーションを維持したまま企業経営を継続することが難しいケースも一定の割合で生じてしまいます。実際にビジネスを行ってみると、創業者間の経営の方向性の違いやまさに性格の不一致などが原因で意見の相違が生じたり、病気や家族の事情などで一緒にやっていけなくなったりする場合もあります。そのような場合に可能な限り会社運営に支障を来さないように締結しておくのが、創業者間契約です。本記事では、ベンチャー・スタートアップの法務に精通した弁護士が、創業者間契約についてご紹介します。
創業者間契約とは
創業者間契約とは、複数人でスタートアップ企業を創業する場合に、創業株主間で締結する株式の取扱いに関する契約です。将来創業株主の一部が会社運営を離れることになった際に、株式をどう取り扱うかなどを定めることが重要です。
創業者間契約を結ばないと起こる3つのトラブル
創業者間契約を結んでいなかった場合、創業株主の一部が会社運営を離れることになった際に、以下のようなトラブルが発生します。
株式をめぐる紛争トラブル
株主は、株式を保有していることで、会社に対し様々な権利を有しています。例えば、株主総会での議決権や、役員の解任請求権、剰余金の配当請求権があります。
創業株主の一部(離脱株主といいます。)が会社運営を離れることになった場合を想定してください。残った株主は、離脱株主の離脱後、離脱株主が会社の経営には口を出さないと考えていると思います。しかし、離脱株主が「株式は手放さない」と主張した場合、離脱株主は、いつまでも会社の運営に口を出すことができ、さらに持分割合によっては、会社運営を離れたはずの株主の賛成がなければ株主総会決議ができない(株主総会の普通決議には、出席した株主の過半数の賛成が必要なため)などの問題が生じます。また、IPOを検討する際にも障害になったり、離脱株主は何ら会社に貢献していないのに、株価が向上するなどのメリットを受けることができてしまいます。
役割や報酬をめぐる内部対立
創業株主の一部が会社経営を離脱する場合、その株式を誰に譲渡するのか、いくらで譲渡するのかが問題となります。創業者間契約を締結しておらず、株式の譲渡先・対価が決まっていない場合、離脱退任する株式の取扱いをめぐって、主を離脱株主と残存する創業株主の間、また、残存する創業株主間でも内部対立を生じる可能性があります。
知的財産の帰属問題
スタートアップ企業にとっては、特許、ノウハウ、企業秘密を含む知的財産が強力な武器となります。創業株主の一人が知的財産の所有権を持っている場合、その創業株主が離脱すると、会社が知的財産を使うことができなくなり、事業が立ち行かなくなる可能性もあります。
創業者間契約に入れるべき条項
創業者間契約には、主に以下のような条項を入れます。
株式の取得ルール
もっとも重要な条項は、創業株主の一部が離脱する場合の株式の取扱いです。離脱する創業株主の株式は、誰かに移転することになりますが、離脱時に株式を譲渡する相手方としては、まずは会社に残る創業株主が考えられます。会社の代表者1名が買い取る方法や、会社に残る創業株主全員が持ち株比率で按分して買い取る方法が考えられます。会社が買い取る方法も考えられますが、会社法461条1項2号にて、自己株式の取得は株主への分配可能額を超えてはならないと定められているなど制約があります。そのほか、会社に残る創業株主が指定する第三者(株主ではない重要な役職者など)が買い取るという定め方も可能です。
また、離脱する株主の功績を評価し、在籍年数に応じて、株主が離脱する際に会社等に買い取られる株式が減少していく仕組みとすることも可能です(リバース・べスティング条項)。
競業避止・秘密保持義務
株主間契約において、株主に競業避止義務・秘密保持義務を課す場合もあります。
経営者である創業株主が、ほかにも複数の会社の役員を兼任しているということも考えられます。株主として会社の成長に参与する以上、会社と競業するような他社の従業員・役員として兼任する場合ことは禁止する(代表者の事前許可が必要とする)ということも合理的です。また、会社の重要な秘密に触れる以上、秘密保持義務を課すことも重要です。
競業避止・秘密保持義務については、会社の考え方にあわせていろいろな定め方があり得ます。
離脱・解任時の手続きと株式買取価格の算定方法
株主が離脱・解任される際に、どのような手続きで株主を買い取るか、また、株式買取価格の算定方法も定めておく必要があります。離脱・解任時の手続きとしては、何をもって「離脱・解任」として株式の譲渡義務を発生させるか、譲渡義務を負う株式の範囲などを定めます。株式買取価格の算定方法としては、発行時の払込価格、譲渡時の時価、第三者の鑑定による価格、直近の譲渡・増資の譲渡価格、無償、備忘価格等の定め方があります。
よくある質問
創業者間契約は2人でも必要か
創業者間契約は、創業株主が2人の場合でも必要です。創業株主が2人であっても、どちらかが離脱する際に揉める可能性はあるためです。
設立後でも創業者間契約は締結できるのか
会社設立後に創業者間契約を締結しても問題ありません。ただ、創業者間契約は、創業者間の関係が良好な間に締結しておくべきであり、会社が成長すればするほど状況が複雑になり締結のハードルが上がってしまうため、早めに締結することが望ましいです。
弁護士等に頼まず自分で作成してもいいのか
弁護士等に頼まず、自分で創業者間契約を作成することも可能です。もっとも、以下に記載するようなメリットがあるため、弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士に相談するメリット
自社のリスクに合わせたオーダーメイドの条項設計ができる
創業者間契約の作成にあたり弁護士に相談することで、自社の法的リスクにあわせて、オーダーメイドの創業者間契約を作成することができます。
ひな形にとらわれない、自社最適の契約書を作成できる
インターネット上にも創業者間契約の雛形は存在しますが、ひな形の条項が自社にあっているか否かの判断や自社にあわせた修正は難しいものです。弁護士に相談することで、ひな形にとらわれず、自社にあった契約書を作成することができます。
創業者間の「言いにくい話」を第三者が整理・言語化してくれる
創業者間契約は、創業者間の会社への貢献を評価したり利害を調整したりする内容であることから、創業者間で直接話しづらい内容が多くなります。弁護士に相談することで、第三者である弁護士が創業者それぞれの話を聞いて整理し、契約の形にすることができます。
創業者間契約については弁護士までご相談ください
当事務所では、特にベンチャー・スタートアップ企業の法務に精通した弁護士が、創業者間契約の作成をサポートさせていただきます。ぜひ一度、当事務所までご相談ください。


この記事の監修者
虎ノ門東京法律事務所 弁護士
中沢 信介
東京弁護士会所属。都内法律事務所パートナー弁護士を経て虎ノ門東京法律事務所参画。台東区法曹会副幹事長兼弁護士実務研究会の代表に就任しており、法律相談担当も務める。


