これから起業を検討されている皆さま、起業されたばかりの皆さまは、事業の進め方や資金繰りなど、考えることが多くあり、トラブルが発生した際のことまで検討する余裕がないかもしれません。ですが、実際には、企業の成長に合わせて、様々なトラブルが発生する可能性があり、トラブルに対応できる基礎知識を持っておくことが望ましいです。また、IPO(企業が初めて株式を一般の投資家に公開すること)を目指すのであれば、早い段階から法務・経理など管理面もきちんと整備しておく必要があります。本記事では、ベンチャー・スタートアップの法務に精通した弁護士が、時間がない中でも、ぜひ知っておいていただきたいトラブルと押さえておきたい知識をご紹介します。
企業の成長に合わせて起こるトラブル
人材・マネジメントに関するトラブル
ベンチャー・スタートアップ企業では、労務管理のノウハウ不足や労務に詳しい人材の不足から、うっかり労働関係法令に違反してしまうことが起こりえます。社員の人数が少ない分、1人の業務量も増え、過重労働になりやすい環境であることも一因です。
また、ルールが十分に整備されていないこと、研修体制が整っていないことなどから、社員による大きなミスや不祥事など、人材に関するトラブルも発生しやすい状況にあります。
経理・経営に関するトラブル
経理についても労務と同様に、ノウハウ不足や人材不足から、適切な管理ができない場合があります。また、ベンチャー・スタートアップ企業では、十分な不正防止措置を講じることが難しいため、経理担当者による不正トラブルが発生する可能性もあります。
経営については、共同で事業を始めた場合、株式の配分や会社の支配権をめぐってトラブルになることもよくあります。多くの方は、自分たちは十分にコミュニケーションを取れておりトラブルにならないと思うものですが、実際に会社運営を行っていくと、負担の偏りや意見の相違からトラブルになってしまうことが一定数あります。。
法務に関するトラブル
会社を運営していく上では、さまざまな法律が適用されます。許認可がないとできない事業もありますし、会社法・著作権法・景品表示法など業種を問わず関係する法律もたくさんあります。従業員を雇用する場合は、労働関係の法令も遵守しなければなりません。自社に関係する法律をよく確認しておかないと、法令違反になってしまう可能性があります。
また、オフィスの賃貸借契約や物品の売買契約、リース契約、お金を借りる際の消費貸借契約、取引先との契約など、様々な契約を理解していないと、トラブルに発展してしまいます。
押さえておくべき株に関する知識
株主は、会社に対し、以下のような権利を持ちます。
・剰余金の配当請求権(会社法453条)
・株主総会での議決権(同法308条1項)
・会社に対し訴えを提起する権利(同法831条など)など…
すなわち、一株でも株を保有している人は、その会社の経営に参加する権利を持ちます。一つの会社の株を複数人で株を持ち合う場合には、このことをよく理解したうえで、最初の段階で、持株比率や脱退する人がいる場合その株式はどうするかなどを決定する必要があります。
押さえておくべき税務・経理に関する知識
会社が支払うべき税金の例としては、以下のようなものがあります。
・国税(法人税、消費税、印紙税など)
・地方税(法人住民税、法人事業税、固定資産税など)
・源泉所得税(会社が給与を支払ったり業務委託の報酬を支払ったりした場合に、支払金額のうち一部を預かって源泉所得税として納付するもの)
・会社員の住民税(給与支払者である会社がその人の給与から差し引いて納付するもの)
また、税金を正しく支払うためだけでなく、財務情報を正確に記録し、外部機関や投資家に対して透明性を確保するため、経理・会計の業務も重要です。会社は、1年に1回以上決算を行い、計算書類等を作成しなければなりません(会社法435条2項)。
社員雇用に伴い知っておくべき知識
社員を雇用することになったら、最低限知っておくべき項目として、以下のようなものがあります。
・労働条件を明示する(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)
・賃金の支払いのルール
通貨支払原則、直接払原則、全額払原則(同法24条1項)、毎月一回以上一定期日払原則(同法24条2項)
・労働時間ルール
原則として1週40時間かつ1日8時間まで(同法32条)
・休憩のルール
労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与えなければいけない(同法34条1項)
・休日のルール
原則として毎週少なくとも1回の休日を与えなければいけない(同法35条)
・就業規則
常時10人以上を雇用する場合、作成しなければならない(同法89条)
・社会保険・労働保険・雇用保険(雇用保険は週20時間以上勤務する労働者がいる場合のみ)に加入する
社員を雇用するにあたっては、守らなければいけないこと・やらなければいけないことがたくさんあります。おろそかにならないよう確認する必要があります。
弁護士に相談するべき理由
以上は一例でして、スタートアップ・ベンチャー企業を運営していく上で、押さえておくべき知識はたくさんあります。弁護士に相談することで、創業者間の契約書を作成して支配権をめぐるトラブルを防いだり、業務の適法性を確保したりすることができます。
ベンチャー企業こそ、顧問弁護士をご活用ください
顧問契約を締結しておくと、すでに関係があり信頼できる弁護士に気軽に相談することができます。特にベンチャー・スタートアップ企業では、社内で法務人材を確保する余裕がなくても、顧問弁護士を活用することで、法律的な支援を受けることができます。ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
Last Updated on 2025年10月30日 by nakazawa-businesslaw


この記事の監修者
虎ノ門東京法律事務所 弁護士
中沢 信介
東京弁護士会所属。都内法律事務所パートナー弁護士を経て虎ノ門東京法律事務所参画。台東区法曹会副幹事長兼弁護士実務研究会の代表に就任しており、法律相談担当も務める。
		

