ベンチャー・スタートアップがビジネスを立ち上げる際、サービスの需要予測や収益性、マーケティング戦略を慎重に検討することは当然です。しかし、それと同様に重要なのが、サービスが法律に違反していないかを確認する「適法性チェック」です。
新しいビジネスモデルの中には、適法性に疑いがあるものが少なからず存在します。もし、提供するサービスが法律に違反していれば、行政からの指摘や指導を受けるだけではなく、サービスの停止に追い込まれる可能性もあります。場合によっては刑事罰を受け、再起が難しくなることも予想されます。
したがって、新しいビジネスを開始する際には、ビジネスモデルが法的に適正であるかを確認することが不可欠です。その確認を行うのは弁護士ですが、なかでもベンチャー・スタートアップ企業に精通した人物によるビジネス適法性診断を受けることをおすすめします。
今回は、ビジネス適法性診断の必要性や内容、トレンドの3つの分野における法規則について詳しく紹介します。
ビジネス適法性診断とは
ビジネス適法性診断とは、企業や事業者が行うビジネスが法律や規制に適合しているかを評価・確認することです。ビジネスに関係する法律・規制に精通した弁護士がビジネスの全貌を確認し、法律・規制に触れる部分がないかを確認します。また、並行して独占禁止法や労働基準法など、ビジネス全体や労働環境に関係する法律・規制に触れていないかどうかのチェックをしていくこともできます。
分野に応じて異なる法律・規制が適用されるため、その分野に精通した弁護士でなければ適切な診断ができません。
当事務所は様々な顧問先があるため、専門的な知見が豊富に蓄えられております。例えば、IT企業、人材派遣会社、電気通信事業者、医療機関、飲食店、建設業、通信販売事業者、製造業者などが挙げられます。このため、顧問先からは、専門用語をそのまま話しても伝わることが多いため非常に助かるとご好評をいただいております。
ビジネス適法性診断の必要性
ビジネス適法性診断の目的は、法律・規制に違反するリスクを解消し、行政からの指導や指摘を受けないようにするとともに、社会的信用性の低下を防ぐことです。どれだけターゲットのニーズを満たしており、これまでにない画期的なサービスであったとしても、法律・規制に違反していればサービスの継続はできません。
ただし、違反していれば即サービス停止というわけではなく、迅速に改善策を講じることで、行政からの指摘・指導を避け、ビジネスを継続できるようになる可能性があります。しかし、サービスの一時休止は企業のキャッシュフローを悪化させる恐れがあるため、なるべくビジネスモデルを作る段階で弁護士によるビジネス適法性診断を受けることが大切です。
当事務所では、その業界ごとで適用されるガイドラインなどを確認して、単なる白と黒の判断をするだけにとどまらず、お客様のビジネスに影響のない方法を一緒に検討させて頂いています。
ビジネス適法性診断の方法と留意点
ビジネス適法性診断では、ビジネスモデルのアイデアを確認し、ブレインストーミングから始めます。お互いに意見を出し合い、ビジネスモデルが法律・規制に触れないかを考えていきます。
これまでにない新しいサービスの場合、弁護士の専門性や経験、法的センスが重要です。そのため、様々な顧問先様がり、経験が豊富な弁護士に依頼することが重要です。
ビジネスモデルの検証においては、下記2点に注目します。
・分野と業種
・ターゲット
たとえば、金融や医療においては、人の財産や生命に関わることから、より厳しい法律・規制が定められています。一方、専門家がターゲットのサービスは相手が不当に不利益を被るリスクが低いことから、規制が緩やかな傾向があります。
類似サービスがある場合は、そのビジネスモデルの調査から始めます。ただし、それでも類似サービスが法律・規制に触れている可能性もあるため、あくまで参考程度に留めなければなりません。
分野別の法律・規制
近年、インターネットの急速な普及により、下記のようなビジネスを立ち上げる方が増えています。
・ECサイト
・アプリケーション開発
・プラットフォームサービス(メッセージ機能を利用するもの)
それぞれの分野における法律・規制について、詳しく見ていきましょう。
ECサイト
ECサイトに関する法律と規制は、多岐にわたります。まず、特定商取引法は販売業者の情報開示や広告規制、クーリングオフなど、ECサイトでの取引に関する重要な規制を定めている法律です。
また、個人情報保護法との関係もあり、プライバシーポリシ―などの整備も必須となります。
さらに、オンライン契約が必要なECサイトでは、電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律は、インターネット上での契約に関して民法の基本ルールを変更する法律です。民法95条3項では消費者の不注意による重大な過失に基づく契約は取り消しができないと定められています。しかし、電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律では、インターネット上の取引において消費者の過失によって契約した場合でも、取消しが可能なことが定められています。
また、広告や宣伝メールを送信する必要がある場合は、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)も関係してきます。これは、ECサイト運営者が原則的に受信者の同意なしに宣伝メールを送信することを禁止したり、一定事項の表示義務を定めたりしている法律です。
アプリケーション開発
アプリケーション開発では、著作権法や特許法、不正競争防止法などが特に深く関わっています。
まず、著作権法は、アプリのソースコードや画像、音声などの著作物の保護に関わる法律です。開発者は自身の創作物を無断で使用されることを防ぐことができます。次に、特許法はアプリの独自の機能や技術を特許として保護し、他者がその技術を無断で使用することを防ぐための法律です。
不正競争防止法は、営業秘密の保護やアプリの外観や機能の模倣防止に関係している法律で、企業間の公正な競争を防ぐ役割を持ちます。例えば、独自性のあるアプリケーションの画面が類似しているなどとして争われた判例があります。
プラットフォームサービス
プラットフォームサービスの開発には、電気通信事業法やプロバイダ責任制限法などが関連しています。
電気通信事業法は、通信の秘密の保護や利用者の利益保護に関する規制を定めている法律です。たとえば、メッセージサービスを提供する場合、通信の秘密を厳守し、利用者のプライバシーを保護することが求められます。
プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)では、ユーザー間のトラブルや違法コンテンツに関するプラットフォーム事業者の責任を明確にするほか、発信者情報の開示要件などが規定されています。プラットフォーム事業者は違法コンテンツを適切に管理・対応するなど、利用者に対して安全で信頼できるサービスを提供することが求められます。
新規ビジネスを始める前に、適法性について専門家にご相談ください
今回は、ビジネスの適法性について説明しましたが、分野別に法律・規制に触れないか慎重に検討する必要があることをご理解いただけたのではないでしょうか。
今回紹介したもの以外にも関連する法律・規制があり、チェック項目は膨大です。
虎ノ門東京法律事務所では、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者の方に向けて、通常の適法性診断に加え、一般的に適法性判断のために必要な項目を列挙した表のなどを提供しております。適法性診断に不安のある方は一度お気軽に当事務所までお問い合わせください。
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