ベンチャー・スタートアップが成長する過程で人を雇用する場面が必ず出てくると思います。この段階になってくるとまた一つ大きな飛躍の段階に到達したといえます。
これが大きい飛躍の一歩であるからこそ人事労務に関しては細心の注意を払う必要があります。人口減少に伴い、就職状況は売り手市場が続いております。人事労務のトラブルを把握することで、トラブルを起こしづらい会社を造ること、そしてそれは働き手にとっても魅力ある会社造りに繋がっていきます。
そこで、本記事は、人事労務トラブルに精通した弁護士が代表的な労務トラブルについて解説をします。
人事労務トラブルとは
人事労務トラブルとは、読んで字のごとく、人事・労務に関するトラブルを指します。これらの問題は非常に多岐に亘ります。今回は、契約形態、残業代、解雇の難しさについてフォーカスを当てて話をしますが、そのほか、採用内定の問題、休暇(年次有給休暇も含む)、ハラスメント(パワハラ、マタハラ)、メンタルヘルス、労働災害、問題従業員の対応、守秘義務、競業避止義務、組合・ユニオン対応などがあります。
ベンチャー・スタートアップ企業、中小企業でよくある人事労務トラブル
ベンチャー・スタートアップ企業、中小企業の代表的な人事労務トラブル3つについて、入口と出口と、そして契約中のトラブルと時間軸に沿って整理をしてみます。
- 入口:雇用形態(雇用契約または業務委託契約)
- 雇用期間中:時間外割増賃金(残業代)
- 出口:従業員が仕事を辞める時(懲戒解雇の難しさ)
入口:雇用形態(雇用契約または業務委託契約)
入口は契約形態の問題です。雇用契約なのか、業務委託契約なのかで、契約の法的性質が異なるため、権利義務の関係に大きく影響します。
この二つの根本的な違いは、適用される法律の違いによって生じます。雇用契約は、民法は当然として労働関係法令の適用を受けます。他方、業務委託契約は基本的に民法の適用のみを受けます。この違いが以下のような差異を生みます。
ア 労働保険と社会保険の加入
雇用契約の場合、従業員の労働保険と社会保険の加入が必要となります。他方、業務委託契約の場合、これらは必要ではありませんし、希望しても加入はできせん。ベンチャー・スタートアップにとって労働保険や社会保険の加入に伴う経済的な負担や事務手続きの煩雑さはデメリットに感じることがあります。
イ 時間外割増賃金の発生の有無
雇用契約の場合は、労働基準法によって定まった時間外割増賃金の支払いが必要になります。他方で、業務委託契約の場合にはこれらが適用されません。注意が必要なのは、契約上は業務委託契約となっている場合でも、その実態が雇用契約であると判断される場合(両者に指揮命令関係があるときなど)と判断されるがあるということです。この場合、形式的に業務委託契約となっていても、割増賃金の支払い義務が生じることになります。
ウ 年次有給休暇の適用の有無
雇用契約の場合、従業員に対し年次有給休暇を取得させることが義務付けられます。他方で、業務委託契約の場合は年次有給休暇の法令が適用されないため、取得させる必要はありません。
雇用期間中:時間外割増賃金
雇用期間中の労務トラブルとして多いのが、時間外割増賃金(残業代)の問題です。雇用契約を締結した従業員が、時間外の労働を行う場合には当然に割増賃金が発生します。
これらの問題で注意が必要なのは以下の場合です。
・固定残業代を支払っているが、その金額が実際の割増賃金の額と連動していないケース(従業員の個別の賃金額に限らず一定の金員(5万円とか10万円とか)を支払っているケースです。)
・従業員に時間外労働をさせているにもかかわらず何も対応をしていないケース
・業務委託契約であるにもかかわらず、出社時間と退勤時間が決まっているケース
以上のような場合には、従業員に割増賃金が発生している可能性が非常に高いです。
当事務所が担当した案件でも、1000万円を超える割増賃金の請求をされたケースが複数回あります。1000万円の利益を稼ぐために、会社として、どれだけの時間的、経済的な負担があるでしょうか。そのような事態にならないためにも、しっかりとした対策を練っておきたいところです。
なお、上記ケースは、当事務所が対応をした結果相当程度の減額に成功しました。
出口:従業員が仕事を辞める時(解雇の難しさ)
ベンチャー・スタートアップが成長をする過程において、人材が豊富になってくると様々なタイプの従業員が入社してくるようになります。すべての従業員が会社の方針にマッチするとは限りません。この時、会社が、従業員を懲戒解雇によって辞めさせてしまうと問題が生じます。その解雇が無効と判断された場合、解雇期間中の賃金(バックペイ)を支払わなければいけなります。また、会社で継続して雇用をしなければいけなくなります。
他方で、生産性が高くない従業員がいたとしても、会社側からやめさせることができないという問題もあります。このような従業員に対してであっても、会社が一方的に懲戒解雇をすると先ほどと同様の問題が生じることになります。
当事務所も顧問先様からこれらのご相談が多数寄せられます。この場合、当事務所では、顧問先様から詳細な情報をお聞きし、そのうえで様々な策を講じることによって、結果として顧問先様のご意向が叶うように対応をしております。実際に、問題社員をやめさせることに成功した実績が多数あります。
人事労務トラブルにお困りの方は、まずは弁護士にご相談ください
今回は代表的な労務トラブルについて説明をさせていただきました。
いずれも非常に頭を悩ませる問題である一方で、どの企業も必ず通る問題になります。ただこの問題についてどのように向き合うのかで、企業のその後の成長スピードが異なってきます。是非ともこれらの問題に適切に対応できるようにして下さい。そのためには、問題の芽が小さいうちに対応することが重要になります。当事務所では顧問業務などを通じてヒアリングを行い、できる限り被害を最小限にするためのアドバイスを行いつつ、顧問先様の希望を実現するお手伝いをしております。少しでも気になることがあれば遠慮なくお問い合わせ・ご質問ください。
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