皆さまは、改めて契約書というのが何のために作られて、どういった効果があるのかご存じでしょうか。ベンチャー・スタートアップ、中小企業では、法務部や法律の専門家といった人的リソースを用意するのが困難な場合もあると思います。
そこで本記事では、簡単に契約書の定義、必要となる場面、作成の流れなどをベンチャー・スタートアップ法務に精通した弁護士が整理します。
契約書とは
契約書とは、取引当事者の契約内容を書面でまとめた文書で取引当事者が確認し、合意をしたものです。 契約書は、当事者が合意した内容を明確にし当時者が内容を改めて認識する効果や、取引のトラブルを回避する効果、そして万が一トラブルになった際の証拠としての効果などがあります。
契約書が必要になる場面
契約書が必要になる場面には次のものがあります。
・新しい取引先と業務を取り決める場合
・賃貸借契約を締結する場合
・従業員を雇用する場合
・共同開発や共同研究を行う場合
・工事などの請負契約を締結する場合
・外注・委託を依頼する場合
・長期的な取引関係を前提としている場合
・株式を譲渡する場合
・個人情報に関する取扱いについて合意する場合
請負契約書や売買契約書は民法、株式譲渡契約書は会社法、個人情報保護に関する契約書は個人情報保護法など、法律の内容に準拠した契約書が必要な場合があります。
例えば個人間で契約書が必要になる場面には、不動産賃貸借契約、金銭の貸借、 物品の売買契約があります。
また、企業間取引において新たな取引先と業務を始める際は、誤解や誤発注などのトラブルを未然に防ぐために契約書の締結が重要と認識しておきましょう。
契約書作成の流れ
契約書作成・締結などの流れは、次のとおりです。
・当事者間で約束・合意する内容を確認する
・片方の当事者が契約内容を正式に書面化する前段階のドラフトを作成する
・ドラフトの修正
・片方の当事者が契約書を作成する
・もう一方の当事者が契約書を確認し、修正内容を検討し、相手方当事者(片方の当事者)に修正案を投げる
・片方の当事者は修正案に応じるか、再修正案を提案するなどして双方当事者が合意できる内容を模索し、確定する
・内容が確定に至ったところで当事者双方で署名捺印する
・当事者それぞれが契約書を保管する
契約書を作成する際に気をつけるべきポイント
契約書を正しく作成することで違法・無効な契約を締結、契約の成立自体を否定されるなどの不利益や、自分自身の不利益な条項を回避する効果があります。
そのためには以下のことに気をつける必要があります。
・取引の目的・背景を理解する
・当事者双方の権利・義務を確認する
・適用法令の強硬法規違反の有無を確認する
・社会通念上、妥当な内容か確認する
・契約書に矛盾する条項がないかを確認する
・契約内容に誤字脱字や不備がないかを確認する
・契約書の内容が具体的で明確な文言で記載されているかを確認する
・契約書が一方当事者に有利すぎる内容(特に相手方有利)になっていないかを確認する
・契約書がテンプレートのまま使用されていないかを確認する
よくあるトラブル
契約書を作成する際によくあるトラブルは、契約内容に不備や曖昧さがある場合や、契約書の日付を勝手に遡らせる(いわゆるバックデイト)ことによって証拠としての価値を棄損させてしまう場合(しっかり内容を理解していればわざわざバックデイトをしなくても対応策はあります。)などがあります。
法律の専門家ではない、知識や経験不足の人が、機械的に契約書のひな形・書式を使っていると、問題が起きたときに何の役にも立たないといった事態が起こり得ます。
契約書作成を弁護士に依頼するメリット
契約書は、当事者間で自由に合意した内容を記したもので、強硬法規を除き、民法をはじめとする法律の規定に優先します。
そのため、契約書を作成する際には、法律に関する知識や経験が豊富である専門家の弁護士に相談することで、次のようなメリットを得ることができます。
・契約書内の条項を明確化し、認識不足や解釈の齟齬によるトラブルを未然に回避できる
・契約書が法的に妥当であるかを確認でき、有力な証拠として有効性を担保することができる
・契約類型ごとに特有の注意点や問題となりうる事由を把握し、適切なリスクの分析を行うことができる
・契約書を変更する場合の相手方との交渉方法をアドバイスできる
・万が一トラブルが発生した場合でも、相手方との交渉のサポートや法的措置をとってくれる
契約書作成を弁護士に依頼する場合の費用
契約書作成の弁護士費用の相場は、10〜20万円程度です。
ただし、弁護士に契約書作成を依頼する場合は、手数料や相談料、実費などがかかり、取引内容の複雑さや、依頼する弁護士によって費用も異なります。
取引内容がシンプルな場合は5〜10万円程度で済むこともありますが、複雑な場合は100万円を超える可能性もあります。
たとえば、売買契約書や賃貸借契約書、請負契約書などの典型的な契約書の場合は5万円程度が相場ですが、取引基本契約書や業務委託契約書などの事業内容の理解が必要な契約書の場合は10~15万円程度が相場です。
また、事務所によって料金設定に差があるため、正確な費用について知りたい場合は各事務所に確認してください。
契約書の作成は弁護士までご相談ください
法的リスク回避やトラブル予防のため、契約書の作成にあたっては、弁護士など専門家によるリーガルチェックを入れることが一般的です。
契約金額が高額になるほど企業は契約に慎重になり、できるだけ自社に有利となる契約を結びたいものです。
もし法律の知識に詳しくない個人で作成した契約書に不備があり、いざ後に争いやトラブル、裁判へ発展した場合、信用面やコストなど甚大な不利益や損害を被ることになります。
それを考慮すると、専門家にリーガルチェックを依頼しておく方が、リスクが回避され、トータル的に無駄なコストの発生を抑えることができます。
また、先ほど述べたとおり、契約書は後日争いになった場合、裁判で証拠となります。そのため、裁判で通用する内容でなければなりません。 当事務所では経験豊富な弁護士がリーガルチェックを担当しています。また、契約書を一から作成することも可能です。契約書が有効か、自社に不利な部分がないかなど気になった場合には遠慮なく当事務所までお問い合わせください。
Last Updated on 2024年10月21日 by nakazawa-businesslaw