商業取引を開始するために必要な書面とは?よく使う契約について解説

商業取引に関する契約とは、売り手と買い手、業務の委託先と受注先、借主と貸主などといった契約当事者双方の間で取り交わす約束のことです。双方が約束に合意をすることにより、それぞれに法的な権利と義務が発生し、法的な拘束力を持つこととなります。企業間の紛争を未然に防ぐ観点から、契約は欠かせない制度です。

本記事では、ベンチャー・スタートアップのレビューチェックに精通した弁護士が、商業取引に関する契約書の基本的な内容を掘り下げて解説します。

商業取引を行う際に結ぶ契約とは

商業取引を行う際契約書の作成は必ずしもなければ取引が成立しないわけではありません。そのため、スタートアップや中小企業の場合には口頭の約束のみで取引を成立させてしまうケースも珍しくありません。

しかし、商業取引における契約書を作成しない場合や契約書に不備や記載漏れがあった場合、紛争の原因に発展するケースや紛争時に適切な対応ができないケースがあります。

一番問題となるケースは、売掛金の回収ができなくなった場合です。このケースだと契約書がある場合とない場合では取れる手段が全く異なってしまいます。迅速性が重要となる売掛金回収業務において、取れる手段が限定されるというのは、致命的な事態を招きかねません。

このように、契約書での約束は取引をスムーズに進行させ、問題発生時にも適切な対応が可能になります。また、契約書には、商業取引の取り決めの詳細を示す証拠としての役割が備わっているのです。

取引に伴う契約書は誰が用意するのか

商業取引の契約書は、取引先と自社のどちらが先に作成を始めても構いません。ただし、取引先が準備した文案には、自社に不都合な取り決めが入り込む余地もあります。そのため、自社での契約書作成が望ましく、他社から提示された場合は、各条項の内容を綿密に精査していく必要があります。

ひな形をベースとして契約書を用意する場合にも注意が必要です。

実際に、私ら弁護士がひな形を作成する際もフラットな立場で作成する場合と、どちらかに有利なように作成する場合があります。例えば、受注者に有利な業務委託契約書のひな形を発注者が利用してしまったりすると、自ら不利な条件で契約を締結してしまうことになります。自分が今利用しようとしているひな形がどちらに有利なものになっているかを見極める必要があります。

売買の取引基本契約書に記載するべき項目

商業取引の中でよく出てくる売買の取引基本契約書を作成する際に、どのような項目を含めるべきか悩む方も多いでしょう。以下では、記載するべき項目は以下のような項目が挙げられます。

【取引基本契約書に記載するべき項目】

・契約の目的

・適用範囲

・個別契約の内容と成立

・納品、納入

・検査、検収

・所有権の移転

・不合格の場合の処理

・危険負担

・仕様

・品質保証

・商品の単価

・代金の支払いおよび相殺

・契約不適合(瑕疵)の規定

・期限の利益の損失

・通知義務

・知的財産権の帰属

・知的財産権その他第三者の権利及び利益の侵害への対応

・損害賠償の範囲

・再委託

・契約上の地位や権利義務の譲渡の禁止

・不可抗力

・秘密保持義務

・通知義務

・反社会的勢力の排除

・解約の申し入れ、解除

・準拠法

・契約期間

・裁判管轄

契約書を作成しなかった場合のトラブル

商業取引において契約書の作成を省略すると、さまざまなトラブルの原因になる可能性があります。具体的には、取引の存在自体が否定されたり、約束した内容を覆されたりするリスクが生じます。契約書を取り交わしても、取引条件の認識に食い違いが生まれるケースもあり得ます。しかし、双方で記名押印した契約書があれば、相手先からの異議申し立ても法的に認められる可能性は低いでしょう。

また、先ほど少し触れましたが、契約書が存在する場合とそうでない場合で、債権回収において取れる手段が異なります。契約書が存在する場合には、売掛金が存在していることを前提に、裁判所を利用して保全処分などを取ることが可能となります。この保全処分を取ることで、相手方の預金口座などを仮に差し押さえることが可能となります。

他方で、契約書が存在していないケースだと、当然、売掛金は存在しているのですが、そのことを立証するために、当時のメール・SNSでのやり取りなどを確認しなければなりません。非常に時間がかかる場合などがあり、債権回収が後手に回ってしまうことが多いです。

取引基本契約書以外のビジネスに関わる契約書

ビジネスで扱われる契約書には非常に多くの種類があります。以下では、売買の取引基本契約書以外のビジネスに関わる契約書の一例を紹介します。

・請負契約書

請負契約書とは、物品製造や業務遂行に関する双方の合意を示す契約書です。完成品の仕様や引き渡し方式、責任の所在を明確化し、業務上の諸問題を未然に防ぎます。

・委任契約書

委任契約書とは、業務を委託する委託者と受託者の間で交わされる契約書です。請負契約書と比べ、業務の実施過程が主な目的となり、受託者には善良な管理者として適切な手法での業務遂行が求められます(善管注意義務)。

なお、業務委託契約書となっている場合には、先の請負契約の場合と委任契約の場合どちらのケースも存在します。両者は、契約書の具体的な中身によってどちらに分類されるかが決まります。

・賃貸借契約書

賃貸借契約書とは、貸主と借主の間で交わされる物品の貸し借りに関する契約書です。填補・工場などの建物や土地などの不動産取引で活用され、法人と個人の双方にとって基本的な約束事を定めた契約書となります。

・雇用契約書

雇用契約書とは、雇用主と従業員の双方で勤務内容や処遇などの労働条件を定めた契約書です。給与や福利厚生などの待遇面を書面化し、労使間の認識の違いによる混乱を防ぎます。

・労働者派遣契約書

労働者派遣契約書とは、就業場所や派遣料金などの実務上の取り決めを明確に示す契約書です。業務内容や派遣人員、就業時間などを書面で具体的に示すと、トラブル発生時の解決がスムーズに進められます。

・ライセンス契約書

ライセンス契約書とは、特許やソフトウェアなどの知的財産の利用許諾を示す契約書です。知的財産の提供側をライセンサー、活用側をライセンシーと区分けしています。

契約書の内容に関しては弁護士にご相談ください

商業取引を始めとする契約書には、売買契約書や賃貸借契約書など様々な種類が存在します。業態や取引の性質で盛り込むべき項目が変化するため、契約書の作成時は各種契約の特徴を理解しておく必要があります。また、法改正によって契約書の内容が変更になることもあるでしょう。弁護士は、取引形態に即した契約書を作成するプロフェッショナルです。また、当事務所では顧問先様に向けてひな形の提供をしております、また、各企業様に向けてカスタマイズを行うことも行っております。契約書の作成でお悩みの方は当事務所までご相談ください。

Last Updated on 2024年12月9日 by nakazawa-businesslaw

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